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ライブハウス界隈に蔓延するマッチョイズムが苦手で泣きたい

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今日取り上げますのはこちらのブログ。

(お互いの間で解決したということで記事は消されてました)

簡単に書きますと、四万十川友美さんというシンガーソングライターの方が新宿JAMというライブハウスに出演した際、他の出演者や観客が酔っ払って騒いでいて非常に困った。という話です。四万十川さんの怒りと悲しみに満ちた文章が賛否を呼び、ツイッターでは1400リツイートを超えて拡散されています。

 

 

誰が悪いのか?

四万十川さん、店側、酔っ払い側、どこにどう責任があるというのは見方によって大きく変わってくると思います。

ツイッター上で可能な限り検索して意見を確認してみましたが、四万十川さんに責任がある(「演奏で黙らせればいい」「ネットで悪口を言うのはよくない」など)と書いてる方が7割。

店側に責任がある(「酔っ払いが騒ぐことを考慮せず弾き語りの出演者をブッキングしたのは店のミスだ」「観客を注意することは難しくても真摯に謝罪すべきだった」など)と書いてる方が2割。

酔っ払い側に責任がある(「興味のない音楽でも演奏中に騒ぐのはリスペクトに欠けている」「出演者も混ざっているのはひどい」など)と書いてる方が1割、くらいだと思います。

個人的には、身も蓋もないですが「全員悪いやろ……」という感想です。演奏で黙らせろとまでは思いませんがステージ上からなんとかする手段はあったかもしれないし、ブッキングに工夫の余地はあったかもしれないし、邪魔をしないようなお酒の楽しみかたもあったかもしれない。

誰が悪いかということにはあまり興味がなくて、この論争というか騒動から「ライブハウス」というものの認識が人によって全然違うということを改めて感じました。で、それはマッチョイズムの有無なのかなーって思って、元バンドマンの視点からちょっと語りたいなと。ウザめの一人語り文章ですがご興味あればお付き合いください。

ここで言う「ライブハウス」

ZEPPとかAXとか、あとクアトロとかもちょっと省いて、収容人数200人くらいの、主に駆け出しのアマチュア~インディーズバンドがライブをする場所の話です。有名な人でもたまに「デビュー前の気持ちを忘れないために」とか言ってライブしてチケット当選倍率何千倍とかになっちゃってダフ屋許せねえみたいな輪廻は数十年前から続いてると思いますが、そういうライブハウスの話です。

ライブハウスの経営

ライブハウスによってそれぞれ違うんですが、基本的には出演者がライブハウスの経営を成り立たせていますチケットノルマというシステムがあるからです。(ノルマのないライブハウスもあります)

一番よくある例として、何月何日のライブに出てくださいとお店から誘われます。(これを「ブッキング」と言います) あなたのバンド以外に、同じような知名度、ジャンルのバンドが4組出ます。1組につき15枚程度、その日のチケットを渡されます。バンドが買い取るのです。
チケットをバンドが売り切ればOK、それ以上に売れたらギャラとしてもらえる、売り切れなかったらその分のお金を自分たちの自腹で出します。チケット代は1500円~2500円くらいで、総額は大体3万円~5万円くらい。バンドを続けていくと初めの頃にライブに来てくれていた友達はどんどん来てくれなくなりますから、どんどん自腹額も増えます。(それ以上の速さでファンがつけばいいのですが、現実はそう甘くない。。)

世の中のライブハウスに出演しているほとんどのバンドが、ノルマ代をガッツリ払いながらライブをしているのです。

Q.なぜノルマが必要なのか

A.ないと店が潰れるから

ライブハウスの経営にはお金がかかります。人件費、光熱費、土地代、そして機材費。音楽の機材って結構高いし、壊れやすいんです。スピーカーのボリュームをゼロにせず電源を切るだけで壊れたりするんです。このご時勢にそんなアホな話あるか?と思うのですが、あるのです。メーカーはそういう機材にセーフティ機構を付ける様子はありません。そんで壊れて修理に出したら数万円とか数十万円かかったり。出演者側が気をつければ機材の故障は減るとは思いますが、それにだって限界はあります。

逆に収入は貧弱です。毎日満員御礼ならいいですが、ほとんどのライブハウスはそうはならない。満員の日もあれば、数人しかお客さんが来ない日もある。例えば10人しかお客さんが来なかったら、チケット代2000円だったら2万円にしかなりません。(ちなみに入場時に1ドリンクの購入が義務付けられているところがほとんどですが、大体1杯500円なので足しても2万5千円)

受付、PA(音響を管理する人)、照明係、ドリンクカウンター、ブッキング担当、人件費だけでも5人分は必要だと思うので、1人5000円でトントン。こんな日ばっかりじゃ経営が成り立たないのはどう見てもわかりますよね。。しかも最低賃金下回る額で働いてる店員さん多いですからね。。

ということでチケットノルマがないとほとんどのライブハウスは潰れてしまうと思うんですが、ノルマがあろうがなかろうが集客数が変わらない出演者もたくさんいるんですよ。漫然とライブしてるだけみたいな。そういう出演者に「もうウチには出なくていいよ」と言える体力をライブハウスに求めるのもそれはそれで厳しい。

海外では出演者がお金を払うなんてありえない、日本のライブハウスはおかしいって話なんかもよく聞きますが、文化も需要も土地代もなにもかも違うんで単純比較はできません。しかし中々に歪な状態であるということは言えると思います。

出演者もバッチリお客さんを呼ぶ、ライブハウスもいい環境を提供する、といういいサイクルを形成するのは本当に難しい。。

体育会系のノリがニガテです

とはいえ、 そういう界隈でずっとやってると、みんな持ちつ持たれつになっていくわけですよ。ノルマ分お客さん呼べなかった自分たちが悪い!でもお前ら頑張ってるからってちょっと安くしてくれた!たくさん酒飲んで売り上げに貢献しようぜ!打ち上げもそのままライブハウスでやるからみんな参加しようぜ!みたいな。そんでちょっと有名なバンドと知り合いになって、仲良さそうな写真をSNSにアップして「1個ランク上がりました!」みたいな。ライブハウスは「うちに出てくれてるバンドはみんなファミリーだからどんどん繋がってね」みたいな。
そういうのはね、素晴らしいんですよ。飲み会とか使ってうまく立ち回った人が得するのは全然OKだと思うんですが、それによってライブハウス界隈にはすごーーーーくマッチョイズムが浸透してるんです。正直すごくニガテなんです。マッチョイズム。お前マッチョイズム言いたいだけだろってのはその通りです。

ライブハウスにホスピタリティという言葉はない

ステレオタイプなライブハウスって、壁はポスターとステッカーまみれで、出演者もスタッフも観客もみんなタバコ吸ってて、天井を見上げればむき出しの配管が埃まみれになっててトイレは臭いみたいな感じなんですが、普通に考えたらそんな場所って行きたくないじゃないですか。でもライブハウスはそういうところだからって一言で済まされてしまうんです。

いや、そういう「ザ・ライブハウス!」ってムードが好きな人がいるのはわかりますしその価値観は全く否定しませんけど、嫌だなあって口にすることさえ非難するような風潮ってのがあるんですよ。「お前ロックじゃねえよ」みたいな。「ロックは自由だから」って言うなら汚くて空気悪い場所にいたくないよって言うのも自由だべって返すけどみたいな。

そんで「ライブハウスの環境が悪いなんてこと、お前の演奏で忘れさせてやれよ」みたいな思想が美徳とされるわけです。バンドマンはどんな話をしても最終的には「俺たちはとにかく良い曲書いて良い演奏するだけっしょ!」って発想に至りがちですが、それがたまらなく嫌でした。
だから分煙化進めたり、店内をキレイに保ってたり、フードメニューを充実させたり、それが難しければ再入場可能にしてくれたり、音楽そのもの以外でホスピタリティを向上させようという姿勢を持ったいくつかのライブハウスが好きで、よく出演させてもらってました。

もちろん出演する場所を選ぶことはいくらでもできるんで、自分に合ったライブハウスに出演すればいいだけなんですけど、お店から出演の打診をもらう以外にも出演者自身やイベンターと呼ばれる外部の主催者が取り仕切るライブイベントがあったりして、この人の主催ライブなら出たいとか、このバンドと一緒にライブしたいな、けどこのライブハウスはあんまり出たくないな……みたいなことはよくあるんです。どの部分を優先させるかなんですけど、「こういうライブハウスじゃないとライブしたくない!」ってすると活動にものすごい制限がかかっちゃうので、よっぽどじゃないと場所が理由で断ることはないんですよね。でも内心ちょっと嫌だなあと思ってるっていう。

そういうバンド、みんなが思ってるよりは多いんじゃないかなーって考えてるんですけどねー。

まとめ

僕のバンドは結局売れなかったので何言ってもどうにもならんしライブハウス業界に変わって欲しいとも特に思ってないのですが、ぶはーっと吐き出してみました。
不況やら若者の音楽離れやら少子化やら、現在ライブハウスの置かれてる状況からしてしょうがない部分も山ほどあるのは承知してますが、溢れ出るマッチョイズム感をもうちょっとうまく処理できればさらに音楽を楽しめる空間になるんじゃないかなーと思ったり思わなかったりです。

もちろん音楽ジャンル次第とも思います。僕はミスチルのパチモンみたいなバンドやってたんで、女性ファンに曲は好きだけど服がタバコくさくなるの嫌だからライブは行きたくないって結構言われました。でも「君のタバコの香りが消えないように吸えもしないのに火をつけた」みたいな歌詞をボーカルが書いてたなあ。