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世紀の駄作……になりかけた佳作、ファンタジスタ ステラ

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突然ですが始めます。サッカー漫画紹介のコーナーです。古今東西いろんなサッカー漫画をご紹介してまいりますです。

 

最初に紹介しますのは、ようやく、ようやく読みました、ファンタジスタ ステラ。

 

 

ファンタジスタ ステラ コミック 1-14巻セット

ファンタジスタ ステラ コミック 1-14巻セット

 

 

 

サッカー漫画好きとして読んどかんとなーとは思いつつ、実はファンタジスタ(無印)が超好きだったというわけではなかったので、後回しにしてしまっておりました。反省。

完結してから1年以上経っておりますが、"功"の部分も"罪"の部分も含め、この作品の魅力を改めてご紹介したいと思います。

 「続編モノ」に加わった劇薬、本田圭佑

ファンタジスタ ステラ(以下ステラ)は、週刊少年サンデーで2012年から2015年まで連載されていました。同じく週刊少年サンデーで1999年から2004年まで連載していたファンタジスタ(以下無印)の続編です。

ファンタジスタ(1) (少年サンデーコミックス)

ファンタジスタ(1) (少年サンデーコミックス)

 

 こっちが無印。主人公のてっぺいが若い

 

無印の舞台は高校年代~五輪代表。ステラでは冒頭で2010年の南アフリカワールドカップが描かれ、そこから2014年のブラジルワールドカップを目指す戦いが始まります。

話の都合上、無印で五輪代表メンバーだったキャラクターがほとんど繰り上がりでフル代表入りしていますが、そこは仕方ない。どのサッカー漫画でも逃れられない宿命です。無印~ステラはまだメンバーの入れ替わりがあるほうよ。
キャプ翼なんてフル代表がほぼ全員小学校時代からの顔なじみなわけで、「世代交代」という言葉が存在しない世界。翼たちがお母さんのお腹の中にいるとき、宇宙から謎のウイルスが降り注いだんでしょう。やたらサッカーうまくなるウイルス。

 

で。無印で楽しく青春サッカー漫画やってたメンバーに、ステラで突如加入したのが本田圭佑。はい。本物の本田圭佑です。

ファンタジスタ ステラ(1) (少年サンデーコミックス)

一巻の表紙からガッツリ出てます

 

正直、読者としては意味がわからない状態。フィクションの世界にいきなり、モデルにしててそっくりなキャラクターとかじゃなくて、完全なる本田圭佑本人が出てくるわけですから。夢小説じゃないですかそんなもん。昔の野球漫画なんかは肖像権ガン無視で長嶋茂雄とか王貞治出しまくってましたけど、今はそんな時代じゃありません。本田一人だけ違和感バリバリです。つーかこの一巻の表紙、本田身体デカすぎだろ。てっぺいより後ろにいるのに顔の大きさも足の太さもやべーぞ。アディダスのロゴさえデカい気がしてくる。

 

ストーリーはてっぺいと本田を中心に、ほぼダブル主人公状態で進みます。本田が目標にしてるレアル・マドリーにあっさりてっぺいが加入してたりするのはご愛嬌ですが、序盤はうまく話が展開してたと思います。お互いに影響を受けて高め合うてっぺいと本田、的な。

強引に世代交代を進めるため、フル代表と酔っぱらい監督が連れてきたユース年代の選手たちで試合をさせ、勝ったほうがフル代表だ!とかいう「リアルジャパン7?リザーブドッグス?」的な展開もありつつ、話はてっぺいと本田の併用が難しいという流れになっていきます。リアルだと、本田と香川は同時に使えねーよみたいな話でしょうか。

 

結局、ユース年代の新キャラ大久保塁がてっぺいと本田のハブになることで解決するわけですが、このあたり本田を登場させたことによる縛りになってしまっていた印象です。てっぺいと本田、どっちかしか使えないって言われたら絶対てっぺいを使うしかないんですよ。だって漫画なんだもん
本田と性格が被っている近藤というキャラクターもいることですし、本田がいなくても話は回せる。ただ、作品コンセプトとして本田を核に据えてしまった以上、いまさら退場させることはできない……ちょっと苦労して描いているかな、という印象を受けました。(作者の草場道輝先生がどう思っていたかはわかりませんが)

 

 

本田を登場させることで、ステラはただの続編モノとは一線を画すことに成功しました。しかしそれは劇薬。どうしても使わざるを得ない縛りにもなってしまったわけです。名作の続編で奇をてらったばかりに、世紀の駄作になってしまう可能性もあったわけです。

 

それでも、ファンタジスタの続編を読みたかった

 いや、さっきね、

ファンタジスタ(無印)が超好きだったというわけではなかった

 って書きましたけど、超好きではないけど結構好きなんですよ。ええ。だから続編が描かれたことは純粋に嬉しかった。やっぱ続編モノって夢があるじゃないですか。「好きだった漫画のキャラクターにまた会える!」っていう。

 

もちろん裏切られる部分もあるんだけど、無印の最初の方から引っ張りに引っ張り続けた伏線というか、主要登場人物に関わるトピックは、ステラの最終ページでようやく解決しました。無印のファンだけどステラは認めない!って人も、そこだけは読んで欲しい。そこだけでいい。無印読んでるときから本当に絶対この件だけは解決してくれって思ってましたので。ええ。

 

逆に言うとその伏線以外は特に回収されたわけではないのですが、そもそもこの漫画、回収すべき伏線って他になかったんですよね。登場人物の因縁とかもほぼなくなっちゃってたし。

そう考えると、本田はステラを誕生させるために必須の新キャラクターだったとも考えられますね。展開を作るために動く役割、メッセージを発信する役割を担わせてる。
オリジナルの新キャラクターが本田のポジションにいたら「なんじゃこのポット出のキャラデカい顔しやがって~~~!!!」となるわけで。大久保塁はちょっとその感じありますけど。新キャラの扱いが難しくなるのは続編モノの宿命ですから。。

 

子供世代を描く二世モノって選択肢もあったでしょうけど、ステラの企画自体が実際のワールドカップに合わせたものだったようなのでそれは厳しかったですかね。二世モノだったら俺たちのフィールドを待ってるんですけどね!!本気で!!!

 

あ、「本田とてっぺい(ファンタジスタという作品の世界観)との融合」というのがステラを通して提示されていた課題なんですけど、最終回の手前で一つの回答が描かれます。マジ!?!?!?そう来たか!?!?!?!!?ってなるので、そこも読んでほしいです。つまり途中で中だるみしてるな~~~って思っても最後まで読め!!ってことです。ハイ。

 

まとめ

ファンタジスタ ステラは本田を完璧に融合させるのは難しかったものの、大きく破綻はさせなかった。総合的に見ると佳作かなと。最後は打ち切りっぽくなってますが、最初から2014年のワールドカップまでということは決まっていた?模様。

 

"実在の人物を追加した続編モノ漫画"というのは、今後も一つのパターンとして使われるのではないでしょうか。個人的にはデカスロンの続編に武井壮が出るとか超読みたいです。