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つばきと一色徳保がいた時代。等身大の自分を探していた世代。

 スリーピースロックバンド『つばき』のギターボーカル、一色徳保が亡くなった。脳腫瘍で闘病しながらも音楽活動を続けていた様子は、同じく脳腫瘍で亡くなったBOOM BOOM SATELLITESの川島道行と重なる。どちらもミュージシャンに愛され、リスナーに愛され、最後まで病気と闘い、音楽に寄り添い続けたボーカリストであり、ソングライターだった。

 

 つばきは2000年結成、2002年にインディーズデビュー。今では死語どころか蔑称として使われることもあるが、「下北系」の黄金期に一際輝きを見せていたバンドだ。僕は大いなる敬意を持って、つばきを最高の下北系ギターロックバンドと呼びたい。

今日は彼らの楽曲を紹介しながら、つばきの思い出話をする。きっと、つばきを好きな人は今、彼らについて話したいはずなんだ。僕もそうだ。だから、みんなそうすればいい。個人を偲ぶのは、ただそれだけでいい。

 

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詐欺と気づかせない、巧妙なポスタービジュアル詐欺映画『帝一の國』

 あなたは、映画の上映時間はどのくらいの長さが好きですか。60分、90分、120分あたりが選択肢かと思いますが、僕は割としっかり内容に浸りたいタイプ。長ければ長いほどいいってことはありませんが、120分前後を使って物語を描ききってくれると嬉しいなと感じます。

 その点「帝一の國」は素晴らしかったのではないでしょうか。ネット上ではすでに絶賛の嵐と言っていいほど評判がいいですが、全14巻の原作を2時間に収めつつ、原作ファンもある程度納得できる内容になっています。正直面白かった。原作の有り余るサブカル臭をうまく中和して、大衆ウケする映画に変換。イケメン俳優目当てに訪れた若い女性は上映中ずっとキャーキャー言ってましたよ。うるせえくらいに

 キャストもみんなキャラクターのイメージ通りですし、森園先輩役の千葉雄大さんあたりはまさに「実写版」と言っていいビジュアル。もう一生メガネを外さずに生きていってほしいくらい似てます。

 

 

キャスト以外のビジュアルで重要なのは、背景

 そう。「キャラクタービジュアルは」いいんです。この映画唯一にして最大の欠点は、キャラクタービジュアル以外のビジュアル面……つまり背景を原作に寄せられなかったことです。

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”TSUTAYA併設のスタバ”という、お腹の弱い人間にとっての誘蛾灯

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つい先ほどの話だ。僕はギリギリのところで生死の切れ目を飛び越えた。

 

僕のような底辺自称フリーランスライター的な人間は、自宅に居場所がないためこぞってスターバックスに集う。夏の夜のコンビニ、入り口でバチバチ言いながら死んでいく虫たち。あの虫自動抹殺装置の名前は誘蛾灯っちゅーらしいけど、あんな感じだ。僕らはみんな、スタバに引き寄せられ、スタバで死んでいく。

それはもちろん悪質な例え話だけど、僕は本当にスタバで社会的に死にかけた。

 

 

そう、腹痛だ。 

いつも通りほうじ茶ティーラテのトールサイズを注文し、意気揚々と席を確保。カフェで扱うにはいささか大きなサイズのノートPCを取り出す。

 

それが、僕が平穏を感じていられる最後の瞬間だった。「助けてくれーーーっ!!!」自分自身の内なる声。ゼロから一気に∞へ。腹痛のふの字もなかったのに、一瞬にして僕は、要救護者となった。 

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さようなら、plenty

plentyが解散を発表した。

 

www.plenty-web.net

 

僕が彼らのライブをはじめて観たのは、2008年の「COUNTDOWN JAPAN 08/09」。ロッキングオンが主催する音楽フェスとしては初となる、オーディション枠での出演だった。

その枠での出演者は6組。12月31日の年越しアクトを終えた後、25時40分から27時50分まで、それぞれ10分ずつの持ち時間で慌ただしく演奏していく。

 

カウントダウンジャパンでは例年、年越しアクトが終わると一気に客数が減る。大晦日は電車も終日運転で、そのまま初詣に行ったり、帰ったりする参加者は多い。メインステージは封鎖され、残るのは深夜に出演するバンドが目当ての者と、本当にコアな(マニアックな)音楽ファンと、フードエリアで飲み明かそうというタイプに大きく分かれる。

 

僕はどれでもなかった。自分がやっていたバンドで、このオーディションに落ちた。一次選考さえ通過しなかった。だから、優勝するようなバンドはどんなもんなのかと、値踏みしに行ったのだ。我ながら暇だなあと思ったり、同じ時間にやっていたダイノジのDJを気にしながら、僕はオーディション枠で出演した全バンドのライブを観た。

 

終わってみれば、結果的に僕は、plentyのステージに嫉妬と羨望の目を向けていた。要は、悔しかった。

 

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「深夜の遊園地に潜入する」という内容のテキストサイトが好きだった。

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「テキストサイト」という言葉が死語になって、どのくらい経つだろうか。

 

むかしむかし、まだインターネットをやってる人が日本人の1割もいないころ。回線速度は今と比べればナメクジ以下で、パソコンの性能もしかり。そんな状態でネット上で音楽なんて流せない、動画なんてもってのほか、画像だってできるだけ使いたくない。

そんな状況に負けじと、データ量の少ない文字だけで閲覧者を楽しませるべく奮闘した勇者たちの作るホームページが、テキストサイトと呼ばれた。まあ、わからないっていう若者たちは、ターミネーターに抵抗するレジスタンスみたいなもんだと思っとけばいいです。それもわからないならBLEACHにおける仮面の軍勢(と書いてヴァイザードと読む。オサレ)だと思っといてください。全く違いますけど。

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