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インターネットのバミューダトライアングルを目指しています

「深夜の遊園地に潜入する」という内容のテキストサイトが好きだった。

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「テキストサイト」という言葉が死語になって、どのくらい経つだろうか。

 

むかしむかし、まだインターネットをやってる人が日本人の1割もいないころ。回線速度は今と比べればナメクジ以下で、パソコンの性能もしかり。そんな状態でネット上で音楽なんて流せない、動画なんてもってのほか、画像だってできるだけ使いたくない。

そんな状況に負けじと、データ量の少ない文字だけで閲覧者を楽しませるべく奮闘した勇者たちの作るホームページが、テキストサイトと呼ばれた。まあ、わからないっていう若者たちは、ターミネーターに抵抗するレジスタンスみたいなもんだと思っとけばいいです。それもわからないならBLEACHにおける仮面の軍勢(と書いてヴァイザードと読む。オサレ)だと思っといてください。全く違いますけど。

 

1998年にドリームキャストが発売され、そこからインターネット世界の住民となった僕は、まさにテキストサイトの洗礼を受けながら育った。

特に、『先行者』で圧倒的知名度を獲得した侍魂や、当時から問題となっていた迷惑メールや架空請求詐欺業者と真っ向から闘うNumeri、幼女が更新している体なのに異常な知識量でネットサブカル文化を紹介し続けたちゆ12歳などを愛読していた。このあたりのサイトがどのくらい流行っていたかというと、ちゆ12歳と侍魂をパロったAVが当時のトップ女優主演で発売されるくらいだった。今でいうとイケダハヤトさんとはあちゅうさんをパロったAVが発売されるようなもの。完全に異常事態であることがよくわかりますね。

 

外にもろくに出ず、テレホタイム(もう知らない人向けに注釈つける気力もないけど、テレホーダイがまだサービス終了してないことだけは覚えて帰ってください)中心にネットサーフィンというか完全にネットに溺れてた僕は、当時流行ったテキストサイトは大体読んでいたと思っていた。

 

しかし、改めてその「読んでいたであろうテキストサイトたち」を見てみると、全く読んだ記憶のないサイトばかりだった。今一番有名なネットライターヨッピーさんのテキストサイトであるオレイズムなんて、本当に一切見たことも聞いたこともなかった。

あまりに当時ネットをやりすぎて、記憶の混濁があるのかもしれない。もしかしたらドリームキャストを買ったところからすでに記憶が改ざんされているのかもしれないと考えると怖くなってきた。俺は一体誰なんだ。北京原人 Who am I?という感じだが、さすがにこれだけは忘れないという、ものすごく強烈に覚えているテキストがある。いつも通り前フリが長かったが、そちらを紹介したい。

 

深夜の遊園地に忍び込む「潜入シリーズ」

 もうサイトは消えていてインターネットアーカイブ(ネットのすべてを記録しておこうとするすごく怖い機関。あなたの黒歴史サイトも保管されているかもしれないので気をつけよう)頼みである。

https://web-beta.archive.org/web/20080316032015/http://www1.u-netsurf.ne.jp:80/~SNobu/korosu.html

こちらのサイトだ。インターネットアーカイブはクソ重いが頑張って開いてみてほしい。

 

 

……どうだろう?

 

写真一切なし、文字の大きさや色、そして行間で「ノリ」を表現する、テキストサイトのお手本のような作りになっているのをわかっていただけると思う。

そして、今こんなものをネットに掲載したら炎上は不可避であるということも、わかっていただけるはずだ。コーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実に炎上する。

別の例えでいうなら、ダイの大冒険で新しい敵が出てきたときにクロコダインが一瞬でやられて「ぐわああああああーーー!!」って叫びつつ全身から血を吹き出す確率と同じくらいの確率で炎上する。

 

 

筆者の身元を調べられる情報は山ほど載っている(というか、ページを遡ると普通に本名が書いてある)し、テキストの内容は要するに不法侵入の告白である。当時の僕は、テキストサイトとしての文章の巧みさに加えて「え、これ、ヤバいんじゃない?書いてる人逮捕されるんじゃない?」というドキドキを溢れるほど感じたのだ。実際読みながらヨダレたれてたと思う。

 

2017年現在、140文字+写真で行われるバカッター的犯罪告白は、もはや新鮮さに欠ける。スピーディーなのはいいが深みがない。情報の流れが速すぎて、すぐに個人情報が特定され、そしてすぐに忘れ去られる。その点このサイトの不法侵入告白は、書かれてから10数年が経つ今読んでもドライブ感があり、没頭できる。色あせない魅力がある。

 

ツイッター炎上などでよく見られるのは、ファーストフード店のバックヤードなどの、別に見たこともないし見たくもない場所の話だ。なんか店員がバカらしいからあそこの店行くのやめよー、で終わってしまう話だ。

しかしこのサイトは「誰もが行ったことのあるテーマパークが、昼間とは違う姿を見せる」ということを教えてくれた。自分も一緒に侵入しているような気持ちにさせてくれた。読めば読むほど、行きたくなる。ディズニーシーに行きたくなる。ディズニーシーに侵入したくなる。

 

 

 

ここまで読んだ方の中には、ピンときた人もいるだろう。

そう、今僕は、すでに閉園時間を過ぎた某テーマパークの中でこのブログを書いている。草木が覆い茂っているエリアに見を伏せて、タイプ音を可能な限り抑えながら。PCの画面を一番暗い設定にしているが、警備員が近くに来てこっちを見たらバレてしまうだろう。早く書き終わらなければいけない。不法侵入の時効は確か3年。僕はこのままここで3年を過ごすつもりだ。スキを見て穴を掘って、その中に住む。栄養は土から摂れば問題ない。地面の下で、ただ静かに、静かにしていればいい。

 

そうすれば、僕は、本当の夢の国の住人になれるはずだから…………

 

 

 

(所要時間1時間:このブログはフィクションです)